マダニ感染症患者の報告は西日本に限られている
マダニが媒介する重症熱性血小板減少症候群ウイルス(Severe fever with thrombocytopeniasyndrome virus =SFTSV)によって引き起こされる致死率の高いウイルス感染症。その主な症状は、最初は発熱、食欲不振、嘔吐、頭痛、筋肉痛が認められ、症状が進行してくると意識障害、歯肉からの出血や下血などの出血症状が認められる。
マダニの感染症の致死率は25%
血液検査では、病気の名前のとおり白血球減少や血小板減少、肝臓障害の指標である肝酵素(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼASTやアラニンアミノトランスフェラーゼALT)や乳酸脱水素酵素(LDH)が上昇する。
マダニの感染症約1週間で改善し始めるが、重症例の場合、症状が改善せず意識障害や出血傾向が認められ、更には呼吸不全、循環器不全、播種性血管内凝固症候群(DIC)を呈して、死亡する。その致死率は現在、国内で25%である。
SFTSVは、マダニの中で維持されているウイルスである(ダニサイクル)。ウイルス保有マダニの吸血によりヒトや動物がウイルスに感染する。
一方、感染した動物からマダニにウイルスが伝播するため、マダニから動物、動物からマダニへの両方向のウイルス伝播が示唆されている(動物サイクル)。中国や韓国では患者との接触によりヒトからヒトへの感染症も報告されている。
5~8月で66%のマダニ感染症
SFTS感染症患者の報告は西日本に限られている。2005年、長崎県での発生が最も古い記録で、2015年には石川県、2016年には沖縄県で患者が発生した。近畿地方以西で発生報告がない府県は鳥取県、大阪府、奈良県、滋賀県のみである。
年齢別の生存者数と死亡者数を比較すると、福岡県で11歳の患者が報告されているが、50歳未満の患者は極端に少なく、50歳以上の患者が全体の95%を占める。死亡率は全体で23%と非常に高く、国内で現在問題となっている急性感染症としては最も死亡率が高い感染症であると考えている。
40代までの若齢層では死亡者が認められないのに対して、50代21%、60代15%、70代20%、80代34%、90代50%と死亡率が高くなっている。
2013~2016年の患者発生数を月別に比較すると、一年中患者が発生しているが、12~3月ではほとんど患者の発生がないのに対して、4月から患者数の急激な増加が認められ、5月をピークとして、徐々に患者数が減少する。
5~8月の4ヶ月間で全体の66%のマダニ感染症患者が発生していることとなる。これらの患者発生時期は、国内マダニの主な発生時期と一致している。
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