マダニ感染症のウイルス感染地域は拡大している
マダニ感染症は、簡単に言うと「マダニに注意!」「高齢者は注意!」「西日本では注意!」である。しかし、もう少し状況は複雑である。最近の国内の医学をもってしても20%の致死率を有する感染症が身近にあることを国民が理解し、その対策をするべきである。
山間部から都市部へマダニが運ばれる
マダニは山道などにいると考えられている。都市部のヒトはマダニが身近にいると考えていない。マダニは、動物の体に数日間付着して動物とともに移動し、飽血する(お腹一杯になる)と動物から離れて地面に落ちる。
多くの動物が地域に定着しているが、その行動範囲は予想外に広い。マダニは動物によりバラ撒かれているのである。都市部の野生動物について考えると、野鳥が飛来し、アライグマ、ハクビシン、タヌキ、ネズミが夜な夜な徘徊している。
これらの動物によって、山間部から都市部へマダニが運ばれて来るのである。マダニは山間部に比べて少ないものの都市部にも結構いるのである。野生動物だけではない。飼育犬を山間部・草むらに連れて行くことはないであろうか?
山間部で遊びを楽しんだイヌの体にマダニがついて、家の周辺にマダニが運ばれる可能性もある。特に猟犬は、マダニが多い野生動物のいる山林を駆け回る。SFTSV保有マダニに出会う確率も高い。
マダニ感染症のSFTSV感染地域
西日本でしかSFTSのマダニ感染症患者の報告はない。マダニは蚊のように飛ばないので地域が限定される傾向が強い。
しかし、和歌山県ではSFTSVに感染したアライグマが急増しており、2007年にはSFTSVに感染したアライグマがいなかったのに対して、2016年は約50%のアライグマがSFTSVに感染していた。
そして、アライグマでの陽性率が上がって来た2014年にこの地域から初めてマダニ感染症患者が報告されている。SFTSV感染地域は拡大している。
更に、我々の調査では、関東地方のシカがSFTSVに感染していることを確認した。SFTSVのマダニ感染症患者が出ていない地域でも、野生動物とマダニの間でSFTSVが存在している可能性があることを認識しておく必要がある。
このほか、西日本の飼育犬にSFTSVに感染した個体がいること、さらには健康な動物が血液中にSFTSVを保有していることが明らかとなった。これは、飼育犬がSFTSV保有マダニに刺咬されたことを意味している。身近にSFTSV保有マダニが存在していることを意味している。
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