下流老人が増えている理由は「前例がないため」
最近、「下流老人」という造語をよく耳にするようになりました。これに似た言葉で「老後破産」や「老後難民」なども、テレビや雑誌、インターネット上を飛び交っています。なぜ最近になって「下流老人」「老後破産」などという言葉が出てきたのでしょうか?
平均寿命が戦後に爆発的に上昇
不思議に感じませんか? 何を隠そう、この構造には現役で働いている世代も今から知っておかなくてはいけない重要なポイントが隠されているのです。
「老後」というのは、第二次世界大戦後にできた言葉です。日本人の平均寿命は、1947年では50歳前後。それ以前を確認しても50歳以下です。
実は、1945年の終戦を迎えるまで、日本人の平均寿命は50歳前後でずっと推移してきました。平均寿命というのは、戦後になって爆発的に上昇するのです。戦後50年程度で30歳も平均寿命が伸びているのが驚きですよね。
このことから考えると、終戦前後に生まれた人たちは、物心が付いた頃には自分たちの祖父母が亡くなっている計算になります。当時は子育てが終わると、その後の人生はそれほど長いものではなかったのです。
定年後の人生は想像よりも長い
しかし、現在はどうでしょうか? 平均寿命が0歳の子どもまで含めた寿命を計算しているのに対して、平均余命は「今この時点から、あと何年生きられるのか?」を計算したものです。
2015年での65歳男性の平均余命は19・46年。つまり、現在65歳の人はこれから先、平均して約20年、85歳ぐらいまで存命という計算です。男性の平均寿命は80・79歳なので、それ以上に長生きすることになります。
65年間生きてきたということは、65年間死亡する確率を乗り越えてきたともいい換えられます。その分、寿命は長くなるわけです。「定年後の人生は想像しているよりも意外と長い」ということですね。
「下流老人」が増えている理由
定年を65歳だとしても、その後20年近くは年金収入しかない期間が続くのです。しかもこのような状況は、長い日本の歴史のなかで、今老後を迎えている人が初体験に近い。つまり、前例がないため、準備不足の事態に陥っているのではないでしょうか。それが「下流老人」という言葉が増えている理由です。
「下流老人」「老後破産」の要因はそれ以外にもあります。終身雇用の崩壊やバブルの崩壊で、社会人になった当初に思い描いていた給料や退職金を受け取ることができなかった――こんなこともあるかもしれません。
極端な言い方をすれば、「自分たちが思い描いていた常識や当たり前が全くの空想だった」ということではないでしょうか。世の中は大きく様変わりしているのに、自分の生活や将来に対する考え方を全く変えようとしていなかった――「下流老人」「老後破産」の根本的な原因は実はこういうところにあるのでしょう。
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