成年後見制度を利用しても不動産が売却できない
家族が認知症だからと成年後見制度を利用すると、思わぬ落とし穴に遭遇するリスクがでてきます。成年後見制度を利用しても不動産は売却できないという事例を見ていきましょう。将史さんの両親は、マンションでふたり暮らしをしていました。昔から仲のよい夫婦で、子どもも独立し、定年退職してからは悠々自適の老後を満喫していたのです。
成年後見制度を利用して手続きする必要
しかし、父は72歳のころに認知症を発症。当初は母が介護をし、近くに住んでいた将史さんもそれを手伝っていたのですが、症状が悪化し、介護も困難になったため、父には老人ホームに入ってもらうことになりました。
そうなると母はマンションにひとりで暮らすことになるため、将史さんは妻とも相談して母を引き取ることに。空いてしまうマンションは売却することになったのです。
ところが、不動産の売却をしようとしたところ、不動産会社からは「所有者である父以外、物件には手出しできない」といわれてしまいました。本人は認知症だと説明をしたのですが、それなら成年後見制度を利用して成年後見人をつけ、手続きをしなければいけないというのです。
成年後見制度の目的は被後見人の財産保全
そこで彼らはいわれたとおりに家庭裁判所に申し立てを行って、法定後見人を選出してマンションを売却しようとしたのですが、なんと後見人から売却は認められないといわれてしまったのです。
成年後見制度の目的は、あくまで被後見人の財産を保全すること。本人のためにしか財産を使うことができません。
所有者本人が意思決定力を持っていない以上、勝手に財産を売買できないというのです。将史さんはどうにかできないかと方法を調べましたが、打つ手なし。父が亡くなるまで結局マンションはそのままで、母と同居することになったのです。
記事カテゴリ: カルチャー