乙嫁語りで描かれる伝統工芸「スザニ」とは?
『乙嫁語り』でパリヤが必死に取り組んでいるのが刺繍です。物語のそこかしこに登場するこれは、「スザニ」という伝統工芸の1つです。18世紀頃に、スザニを結婚の持参品とする文化がはじまりました。1辺が3メートル以上の大きなものは壁掛けや部屋の間仕切り、各種カバーなどになります。
刺繍布すべてがスザニではない
ただ、刺繍布すべてがスザニと呼ばれるわけではなく、祈祷用の敷物は「ジャイナマズ」、食卓の床に敷く「ダスタルハン」など、使い方によって呼び名が変わることもあります。『乙嫁語り』では、読者に分かりやすく伝えるために、「刺繍布」と統一しているのかもしれません。
スザニには、新たに結婚する若いふたりに「たくさんの幸せがあるように」と祝福するメッセージが込められています。
『乙嫁語り』の【第十話】で布支度をするティレケは、自分の好きな鷹ばかりを刺繍していますが、本来は柄に由来する願いを込めて縫うものです。
スザニは木綿や絹の布がベース
また『乙嫁語り』の【第二十六話】でアミルが縫っていた枕覆いの刺繍の柄は花の模様になっています。花は生命力の源であり、生命の輝きを示します。一緒に縫われた草のつるには、アミルとカルルクが長く幸せであるようにという願いが込められているのです。
『乙嫁語り』の【第四十七話】でカルルクの姉セイレケから、パリヤへ布支度用にと、たくさんの布が渡されています。スザニは木綿や絹の布をベースにして、同じ木綿や絹の糸を使って刺繍をします。縫い方は、チェーンステッチ、ボタンホールステッチ、サテンステッチを中心で、縁取りにはカウチングステッチも使われます。
花嫁道具として、自分の結婚生活や未来の家族の幸せを願って刺繍をし、また花嫁の母親や親族の女性たちが花嫁へのプレゼントとして祝福を願って針を入れていくので、美しい花の咲き乱れるような、華やかなデザインが多いのかもしれませんね。
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