宝塚の雪組は和の世界観に定評のある骨太な舞台
花組、月組が発足した3年後の1924(大正13)年、旧宝塚大劇場が完成すると、公演数や生徒数の増加に備えて雪組が誕生。戦前から戦後にかけて雪組で活躍した春日野八千代は、「白薔薇のプリンス」の異名で爆発的人気を誇り、暗い日本の希望といわれた。
宝塚黄金期に雪組の人気を高めた
当時はまだ娘役人気の方が強かった宝塚で、男役トップスターの絶対的ステータスを築き、女性だけでも十分に舞台を作れることを証明したのだ。その後も、宝塚黄金期を担った汀夏子、長身で妖艶な雰囲気を持つ麻実れいが雪組の人気を高めていった。
雪組は『忠臣蔵』『JIN・仁』『一夢庵風流記 前田慶次』といった数々の日本物に挑戦し、成功させてきたという歴史がある。その礎となったひとり、杜けあきは和のたたずまいも似合う男役で、旧宝塚大劇場の幕おろし公演で演じた『忠臣蔵』大石内蔵助は、今でもファンの間で語り草になっているほどだ。
後任の一路真輝も同じく日本物を得意としていたが、退団公演ではウィーンのミュージカル『エリザベート』を大ヒットさせ、後世に残る宝塚の歴史的傑作を生み出した。近年ではキレのあるダンスが持ち味の朝海ひかる、水夏希が続けてトップを務め、日本物だけでなく「ショーでも魅せる雪組」にもなっている。
宝塚歌劇団で雪組は質実剛健な組
雪組は「質実剛健」な組と言える。華やかな宝塚歌劇団の中にあって浮き足立つことなく、全部をコツコツと抜かりなく仕上げ、脚本が見えるような芝居を描くことが多い。
といっても決して地味なわけではなく、緻密に作り上げられた芝居は完成度が高く、骨太で見ごたえがあり、観客の心に深く響く。いい意味でクセがないので、初めて宝塚を観るという場合は雪組が最適と言えるかもしれない。
もちろん作品にもよるので、一概にはいえないが。また、普段宝塚以外の舞台を観ている目の肥えた人が見ても、雪組の作品は充実した舞台に映るはずだ。
雪組は歴史的にも歌、ダンス、芝居のバランスが良い。特定分野が抜きん出ているわけではないが、緻密に舞台を作り上げるのが特徴。華やかさを失うことなく堅実で誠実な舞台で着実に観客を魅了する。完成度の高さは折り紙つきだ。
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