不動産の相続で専門家の測量が必要になった事例
財産価格の整理は相続の前提条件です。相続するときに分割が難しいだけでなく、境界線を確定できなければ手出しできないのが不動産。境界線の相手にも確認して、必要ならば専門家に相談することになります。確定が難しい不動産は相続のために測量が必要になることもあるのです。
相続する不動産の境界線が曖昧だった
田浦さんは3人兄弟の長男。実家で両親との同居生活を送っています。次男と三男はすでに自立しており、実家から離れた遠方で、それぞれ暮らしている状況です。
しかし、ある年の3月、父が突然の病気で倒れ、そのまま帰らぬ人となってしまいました。田浦さんは急いで弟たちに連絡。悲しみに暮れる時間もないまま、母や兄弟たちとともに、葬儀や知人への連絡など、必要な手続きを執り行いました。
その後、葬儀が一段落したころ、兄弟全員が揃っているところで相続に関する話し合いを開始します。しかし、急の不幸だったこともあって父は遺言書を残しておらず、母も財産の内訳を把握していませんでした。
そこで、全員で父の資産を調べて十分に話し合い、全員が納得するかたちで財産の分割法を決定、相続を進めようという話になったのです。しかし、ここで問題が発生してしまいます。
父が残してくれた自宅の不動産について改めて調べてみると、自宅と隣家との間の境界線が曖昧になっていたのです。隣人に事情を説明し、話を聞いてみても境界線に関する意見が食い違っています。そのため、相続財産の大半を占めていた土地が宙に浮いてしまうかたちになってしまいました。
正確な不動産の価値を割り出せない
登記簿に記載された公法上の土地の境界線(筆界)とは別に、各自が所有している土地の境界線は、所有者間の合意があればそれに合わせて決定することができます(所有権界)。
しかし、逆にいえば隣人同士がお互いに別の主張をして譲らなければ、土地の範囲や広さを確定することもできないということ。誤解があるまま一方が改築などを行ってしまい、訴訟にまで発展するということも少なくありません。
また、広さがはっきりとはわかっていない以上、正確な不動産の財産価額を割り出すことも不可能。その状態では売却することもできず、相続税の算出や申告すらも進められなくなってしまうのです。
結局、田浦さんは専門家に依頼し、この問題の解決を図りました。その結果、測量を行うことになり、数十万円の測量費用を支払うことになってしまったのです。最終的に訴訟などに発展することはなかったものの、測量費用も安くはなく、相続を前に手痛い出費を強いられることになってしまいました。
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