相続財産でへそくりを申告しないために税務調査
相続財産はどこからどこまで申告が必要なのでしょうか。じつは、へそくりも申告が必要です。相続税を申告する場合、金額の基準になるのは、誰が作り出した財産かということ。へそくりも元は夫の給料なので、夫の財産を相続したものとして課税されてしまいます。具体的な事例で見ていきましょう。
期限内に諸々の相続手続きを済ませた
倉木さんの夫はサラリーマンです。多くの家庭でそうしているように、毎月の給料から生活費として一定額を専業主婦の倉木さんに渡していました。夫婦のお金を管理する立場にあった倉木さんは、毎月夫からもらう生活費をやりくりして、余った分をへそくりとしてコツコツと貯めていました。
結婚してから30年、倉木さんの努力の甲斐もあり、貯まったお金はなんと400万円。倉木さんは、結婚してからずっと専業主婦で、パートなどの職歴はありません。夫の仕事が忙しく、倉木さんには家にいてほしいという夫の要望もあり、家庭で生活を支えたのです。
そんな折、過労がたたり、結婚30年目にして夫は亡くなってしまいました。夫の資産は自宅の土地と建物の分で2000万円、そして300万円の預貯金です。倉木さんは、期限内に諸々の相続手続きを済ませましたが、へそくりで貯めた自分名義の預貯金400万円は、自分のモノだと思って申告しませんでした。
相続税の税務調査で真っ先に指摘
ところが2年後、突然、税務調査が入りました。その結果、税務官は倉木さんにはまるで考えもしなかった自分名義の400万円の預貯金について問いただします。倉木さんは、正直に「へそくりでこつこつ貯めたお金です」と答えました。
じつは、相続税の税務調査で真っ先に指摘されるのが名義預金です。税法上では、名義が誰になっているかではなく、その財産を誰が作り出したかを重要視しているのです。夫の財産として申告しなかった倉木さん名義の預金は、夫の遺産として課税の対象になると指摘されてしまいました。
最初から倉木さん名義の預金も、夫の財産として申告していれば納税額はゼロのはずだったのですが、申告漏れ分を修正申告することで余計な出費が発生してしまったのです。
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