相続人が不在でも相続を進めるには家庭裁判所
相続人が全員いることは手続きを進めるための原則です。しかし、相続を始めようと思ったのに相続人がいない、連絡がつかないという場合も少なくありません。ただし、そんなときのための対策制度も用意されているのです。相続人が不在でも相続を進めるにはどうしたらよいのかみていきましょう。
財産の相続の話になって重大な問題
鈴木さんはふたり兄弟の次男。いまは実家を出て、妻や子どもと一緒に暮らしています。兄は2年ほど前まで実家で両親とともに生活していたのですが、あるトラブルが起きて両親といい争いに。飛び出すように家を離れ、そのまま連絡がとれなくなってしまいました。
鈴木さんと兄は決して仲が悪かったわけではありませんが、兄と両親がケンカした当時、すでに鈴木さんは家を出て暮らしていました。そのため、兄には連絡する機会もないまま音信不通になってしまいます。
鈴木さんも、出ていった当初は探す方法はないかと調べていたのですが、結局連絡を取ることはできず。行方を気にしながらも、いつか連絡が来るだろうと放置してしまっていたのです。
それから2年後、父親が突然の病で亡くなってしまいます。鈴木さんは、母とともに葬儀などの手続きをしながら、どうにか父の訃報を兄に伝える方法はないものかと、手を尽くして調べていました。
しかしその努力も空しく、結局兄は行方知れずのまま。長男が欠席したままに、葬儀は終わってしまったのです。その後、母と残された財産の相続はどうするかという話になり、そこで重大な問題に気がつきました。
遺産相続には相続人全員の承認が必要
遺産を相続するためには、相続人全員の承認が必要。つまり、兄と母と自分、3人分の署名や押印がなければなりません。兄と連絡を取らない限り、手続きを進めることができないのです。
父は急死だったため遺言書は残されておらず、兄の相続権をどうするつもりだったのかも不明なままです。連絡が取れなくなって2年しかたっていないため、現段階では失踪の宣告を行うことすらできません。そのため、このままでは残されていた預貯金を引き出すことすらできない状態なのです。
結局、鈴木さんは家庭裁判所に申し立てて代理人を立てることにしました。しかしこの方法では、後に兄が戻ってきた場合、代理人によって行った相続に兄が不服を申し立てることも考えられます。
もしそうなってしまうと、改めて分割協議を行ったり、それに合わせて修正申告をしたりする必要が出てきます。また、修正する場合には追加納税を求められるかもしれません。そのようなことを考え、鈴木さんは、兄が戻ってきて欲しいような戻ってきて欲しくないような、そんな複雑な思いを抱いてしまっているそうです。
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