相続人の確認不足で財産トラブルに遭遇した事例
相続人は配偶者や子どもだけではありません。思わぬ相続人が現れ、相続分が減ってしまうこともあります。兄弟たちの相続権についても確認を怠らないようにしましょう。相続人の確認不足でトラブルにならないためには、子どもがいないときの相続人は兄弟にも注意する必要があるのでした。
ほかに相続人がいないか税理士が質問
共働きの黒田さん夫妻には子どもはいませんでしたが、充実した毎日を過ごしていました。ところがある日、黒田さんの夫が急に倒れ、そのまま帰らぬ人になってしまいました。
夫の両親と兄弟はすでに他界しています。ただ、夫の兄には息子が、そして弟には娘がいます。夫にとって甥と姪にあたる存在です。彼らとは、夫の葬式で初めて顔を合わせました。
黒田さんは相続に詳しくなかったので税理士に相談。税理士から「ほかに相続人はいませんか」と聞かれ、子どもがいないので「私だけです」と答えました。子どもがいない場合、夫の財産はすべて妻のものになると思っていたのです。
お金を下ろすには相続人全員の印鑑
ところが税理士は「ご主人にご兄弟はいますか?」と聞いてきたので「兄と弟がいましたが、すでに亡くなっています」と伝えました。税理士は「そのご兄弟のお子さんは?」と続けます。黒田さんが葬式で初めて会った夫の甥と姪を思い出し、その存在を税理士に伝えたところ、なんとそのふたりも相続人だというのです。
税理士によると「被相続人の預金口座からお金を下ろすには相続人全員の印鑑が必要」とのこと。黒田さんは、やむなく葬式で一度会っただけの夫の甥と姪にそのことを話しにいきました。
ところが彼らは、自分たちにも財産を分けろと主張してきます。黒田さんに財産をすべて相続させる旨の遺言書があればよかったのですが、それもありません。結局、財産の4分の1は甥と姪のものとなり、黒田さんは全財産を受け取ることはできませんでした。
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