FMラジオの受信周波数帯域が複数存在する理由
日本向けとして販売されているFMラジオには、様々な受信周波数帯域の製品が存在する。下限はすべて76MHzなのだが、上限については、90MHz、95MHz、99MHz、108MHzと、確認しただけでも4種類の製品が流通している。FMラジオの受信周波数帯域が複数存在する理由を見ていこう。
日本専用のFMラジオ周波数をカバー
FMラジオの受信周波数帯域がなぜこんな種類があるのか、これを理解するためには、まずアナログテレビの時代までさかのぼる必要がある。頭を2011年7月24日以前にリセットしてみよう。
この時代、日本におけるFMラジオの放送帯域は76~90MHz。一方、海外の多くの国では87.5MHz~108MHzを使用していた。つまり、日本専用ならばFMラジオの周波数は76MHz~90MHzさえカバーできればこと足りるのだが、輸出を考えると108MHzまでカバーさせる必要がある。
本来なら各国向けにローカライズした製品を供給するのがベストなのだが、ここへきて「格好良いビジネスマン」の時代が訪れる。高度成長期はがむしゃらに働くのがよしとされていたが、この時代、ちょっとオシャレで、世界中を飛び回るグローバル野郎に注目が集まったのである。
FMラジオの周波数の上限が拡大した
(海外なんか行きゃぁしないのに)世界時計的なものが流行した時代。ならば、「グローバル対応」ということで、FMラジオに76~108MHzをカバーさせちゃえば、同じモデルを世界に流せるではないか。こうして、ワールドバンドレシーバーを中心に周波数の上限が拡大していったのである。
もちろん、この対応は、テレビの1~3chの音声が聞こえるという副産物を産んだ。多くの地域でNHK総合の音声が聞こえるメリットは、結果として商品価値を引き上げることにもなって、一般に浸透していったのである。
ところが、地上波テレビの完全デジタル化(以降、地デジ化)以降、当然ながら、アナログテレビ1~3chも放送を終了した。これによって、ワールドバンドレシーバーやグローバル対応をうたう一部のラジオを除いて、周波数を拡大した意味が無くなってしまったのである。そこで、対応の早いラジオメーカーから順に、FMラジオの受信周波数帯域を76MHz~90MHzに戻していった。
ラジオのばらばらな周波数の上限
ところが、まさに青天の霹靂とも言うべき事態が起きる。2013年7月、総務省の「放送ネットワークの強靱化に関する検討会」が中間とりまとめを公表し、さらに、9月には「V-Low マルチメディア放送及び放送ネットワークの強靭化に係る周波数の割当て・制度整備に関する基本的方針」が公表された。
その中では、前出のマルチメディア放送について99~108MHzとすること、95~99MHzはガードバンドとすること、90~95MHzは民放AM局の難聴対策、およびコミュニティ放送局にあてることがうたわれた。実質的に、FM放送の周波数帯が76~95MHzに拡大したわけだ。
とはいえ、ラジオメーカーとしては「はいはい、そうですか」とはいかない。また変わるかも知れないし、だったらグローバルのまんまで良い。
そんな葛藤といきさつから、対応が追いついていない90MHz、総務省の現行割り当てに沿った95MHz、マルチメディア放送が始まるから99~108MHzがFMにならないのはわかったけどガードバンドは何があるかわからないので99MHz、グローバル対応の108MHzとばらばらな周波数の上限になっているのである。
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