FM補完放送で見え隠れするAM各局が抱える問題
90MHz帯のFM補完放送がスタートして、もうすぐ4年が経とうとしている。北日本放送(90.2MHz)から始まったそのビッグ・ウェーブは、全国で30局を超えるまでに拡大した。難聴対策が旗印のFM補完放送、免許の敷居を下げ過ぎのような気もするのだが、そこにはAM各局が抱える「ある問題」の存在が見え隠れする。
FM補完放送はあまりにスピーディー
2013年7月、総務省の「放送ネットワークの強靱化に関する検討会」が中間とりまとめを公表し、さらに、9月には「V-Low マルチメディア放送及び放送ネットワークの強靭化に係る周波数の割当て・制度整備に関する基本的方針」が公表された。
総務省周辺で様々な力学が働いたことは想像に難くないが、筆者は、最も大きかったのは、AM各局の送信設備に関わる問題ではないかと思っている。
実は、放送ネットワークの強靱化に関する検討会による中間とりまとめでも、民放AM局の送信所が海や河川に近くて津波や洪水の被害を受けやすいこと、特に送信アンテナの更新には多額の費用がかかり経営を圧迫することなどが、難聴問題よりも先に取り上げられている。100kwクラスの局で20億円といった具体的な試算にも触れていて、総務省がいかに重視しているかがわかる。
とはいえ、わずか1年ほど(正確には、政令が出てから3ヶ月半)のあいだに一気に進んだFM補完放送、あまりにスピーディー過ぎる気がしてならない。1エリアにつき、1社1波という放送波の大原則を変える電波行政の大転換である。
FM補完放送への意見が分かれる
総務省は、わずか21日間だけ「AMラジオ放送を補完するFM中継局に関する制度整備の基本的方針(案)に対する意見募集」を行った。
結果、AM33社、FM26社からFM補完放送への意見が出され、当然だが、AM各局からは肯定的な、FM各局からは(間接的な反対意見も含めて、制度が強行されるなら最低限の利益を守りたいという)実務的な意見が多かった。
例えば、エフエム横浜からは、「AMラジオ局のインフラ強靭化により、既存FMラジオ放送事業者の脆弱化、経営破綻を引き起こすものであってはならないと考えます」という至極まっとうな意見が提出された。
筆者は、間接的な反対意見だと思うのだが、総務省は「本方針案に賛成する御意見として承ります」とするなど、かなり乱暴だ。このあたりからも、FM補完局が既定路線であることがうかがえる。
FM補完放送はプラスの面も多い
既存FM局にとっては戦々恐々なFM補完放送だが、リスナーにとってはプラスの面も多い。まずは、FMラジオ局に選択肢が増えるということ。
これは単純に聞こえる局の数が増えるというのもあるが、各局が個性を出そうと努力することによって、今までになかった番組やムーブメントが生まれる可能性がある。各局が切磋琢磨することによって、ラジオそのものが活性化していくことも考えられるだろう。
また、主に都市部での話だが、周波数不足から新規開局を制限せざるを得なかったコミュニティF Mについて、周波数帯域が5MHz増えたおかげで免許が下りるようになった。
そして、最も良い影響があった点としては、各メーカーとも、「ワイドFM(FM補完放送のこと)」をセールスポイントとしてラジオの新製品を出すようになったことだ。魅力的な新製品は、必ずそこに新しいユーザー(リスナー)を呼び込んで来る。その良い循環が、再び動き出したと言っても過言では無いのである。
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